2012年2月アーカイブ

 今回は特に、お子様のいらっしゃらないご夫婦に役立つお話です。あなたの「お子様ご夫婦」にも参考になるかもしれません。お役に立てれば、と思います。

 まず、前提があります。あなたにはすでにご両親がなく、お子様(養子も含む)もなく、配偶者のみのご夫婦であることです。あなた男性か女性かは関係ありません。

 あなたがもしもの時、あなたの財産を配偶者にすべてお渡ししたい、と希望されているのであれば、遺言書ですべての財産を配偶者に相続させると書いてください。そして、遺言執行人を配偶者または、あなたがもっとも信頼されていらっしゃる方にお願いし、その旨を遺言書に記載してください。

 なぜなら、遺言書は書くだけではだめで、それを誠実に執行する方(遺言執行人)がいませんとその書いた通りにはいきません。あなたが書いた遺言書は誰かによってその通りに執行されると勝手に思っていたら、それは妄想です。実際には、遺言書の紛失、破棄、改ざん、もありえます。筆跡鑑定所というものがありますが、遺言書も鑑定の要請が多いのです。遺言書を作成するときは、以上のような危険のない公正証書遺言にされることをお勧めします。

 あなたが遺言書であなたの配偶者にすべての財産を相続させると書いておかないと、子どものいないご夫婦の場合、あなたにもしものことがあると、あなたの財産は、あなたのご両親がすでにお亡くなりになっている場合は配偶者とあなたのご兄弟姉妹全員のものになります。したがって、配偶者はご自分とあなたのご兄弟姉妹全員の印鑑のそろった遺産分割協議書を作成しませんと、あなた名義の銀行預金は下ろすことはできません。特に、あなたのご兄弟姉妹の一人がすでにお亡くなりになっていると、遺産分割協議書にはそのお亡くなりになった方のお子様全員の署名捺印が必要になります。このケースではかなり複雑になります。配偶者にとって大変なご負担となります。私は、金融機関にいて、この状態に陥り、遠方に散らばっているご兄弟姉妹及びそのお子様のご印鑑をいただくために配偶者がどれだけ大変なことになるのかを実感しています。印鑑をもらうためには、遺産分割の同意が入りますので、全財産が配偶者には渡らなくなります。配偶者のご苦労が増し、あなたの当初の思惑が果たせないことになります。こういう場面では遺言書の役割はかなり大きいものなのです。

 遺言書ですべての財産を配偶者に相続させると書けば、あなたのご兄弟姉妹には、それに文句を言う権利、つまり「遺留分」がありませんので、どなたからもクレームのつけようはありません。ご夫婦は何親等でしょうか?実はご夫婦には親等はありません。配偶者だというのみです。それほど保護の厚い配偶者の権利も、あなたが遺言書の機能を駆使しない限り絵に書いた餅となりかねません。ご注意ください。

 ちなみに、遺産分割協議書のそろわないケースでは不動産売買は限りなく困難になります。不動産を処分して相続税を払いたくても、配偶者は、ふだん会ったこともない、あなたの亡くなった兄弟の、甥や姪を訪ねて奔走する日々が続きます。約1年間かけて印鑑がそろうというのが平均です。それほど困難を極めます。再度配偶者と会ったときはげっそり痩せていたというケースもあります。配偶者をこのような目に会わせないためにも遺言書の機能をうまく活用してください。くどいようですがご自分のご両親がすでにお亡くなりになり、お子様のいらっしゃらないご夫婦は特に遺言書の活用方法をよく研究されることをお勧めします。

 私は、金融機関で公的年金の請求手続を本人に代わって6000件実行しました。その結果を踏まえてお役に立つ情報をご提供いたします。年金や介護保険制度の申請は、今までご友人、親、兄弟から情報を得ながら横並びで何とかなりました。間違っていたら、修正すればよいのです。年金のもらい忘れも一時社会的に問題になりましたが、修正することでもらい忘れが戻ってきます。これは、わからなければ、周りの方から教えてもらうことが可能な世界です。修正したら回復します。ところが、遺言・相続は、生き方が一人ひとり違いますので周りの方の意見は参考になりません。また修正が聞きません。それが必要なときは、あなたはすでにおりません。ここが、遺言相続の問題は全員が未体験の問題だと言われることろです。間違いましたので直しますというときにはあなたはこの世におりませんので直しようがないのです。

 円満な相続の実現は専門家にご相談ください。①「エンデングノート」と②「遺書」と③「遺言書」はそれぞれ役割と目的が違います。私の話は最後の③遺言書についての紹介でした。この辺を鮮明に区別して対処しませんと単なる教養話の段階になっています。是非あなたの終焉を厳粛な意義のあるものにしてください。私の役目もそこにあります。

 最後までお目を通していただきありがとうございます。次回もあなたにお役に立てるテーマを取り上げます。

所長 遺言コンサルタント 柴田 純一

  

  本日、事務所の所在地にある板橋区権利擁護センター主宰の「遺言・相続・成年後見人のセミナー」に参加しました。参加者は150名。セミナー終了後の具体的相談者20名の規模です。

 セミナー受講者の一人から質問がありました。「子どもに成年後見をさせたとき、費用を子供に払わないといけないのか?」。講師の説明がありました。「当事者で決めて無料にしても構いません。その分を遺言書で相続財産を加えることもできます」。すかさず質問者の独り言とも言えるつぶやきが聞こえました。「そうですよね、一所懸命育てたんですから」。まわりからもどよめきともつかない納得の声がたくさん聞かれました。

 親と子どもの意識のズレが鮮明に浮彫にされたと感じました。戦後の個人主義で教育を受けた世代にはかなりドライに考える方が大勢おります。親は親の論理があり、子どもは子どもの論理があります。おそらく質問者のケースでは、子どもとの間ですんなりとはいかないだろうなあと思わされたところです。

 戦後の混乱期を懸命に生き抜き、子どもを立派に育て上げる苦労は並大抵の苦労ではありません。ご質問者のご意見は当然のことだと思います。私も、何とかこのご苦労を子どもにわかってもらえる遺言書作成のお手伝いに邁進しなければ、と心を新たにしたところです。

 シニアライフコンサルタントとして、団塊世代のお手伝い12年目の私の仕事はご自分の終焉を円満なものにしたいという皆様に、遺言書等を通じてその実現を図ることです。この記事にお目を通されたあなたに役立つ情報をご提供し続けることも私の役目です。よろしくお願いします。

 

 

 

 

 

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